[環球網]インドネシア、進む独裁化

 インドネシアでは今、長期政権により独裁的な右傾化が急激な速度で進んでおり、坂道を転がる球の如く、それは留まることを知らない。まずはその中心となる“強いインドネシア思想”、“パンチャシラ・ナショナリズム”、“クアト党”と、現在に至る独裁化の基盤となる歴史について簡単に振り返ってみる。
 インドネシアでは1990年代に”強いインドネシア(富强尼国/kuat Indonesia)”構想という思想が当時の前進共和党のスドロプトヨ政権で提唱され、それを軸に様々な事業を行ってきた。これらは当時、“民族国家主義”と訳される“パンチャシラ・ナショナリズム”(民族国家主义/pancasilanasionalisme)というインドネシア独特のナショナリズムの高まりに影響を受けたもので、事業拡大と共に更なる国家の発展をもたらした。このパンチャシラ・ナショナリズムというものは簡単に言えば“インドネシア国家への愛国心やそれらが提唱するイデオロギーへの崇拝”である。
 2000年代に入るとドゴロニデ氏が政権の座に就き、16年もの超長期政権を展開した。そして彼は優れた人格者であるという政治家への危険な人格崇拝の様なものがメディアを中心に始まった。これを機に更なる右傾化が進み、ドゴロニデ氏(dogoronide)への個人崇拝やパンチャシラ・ナショナリズムは独裁の正当化として使われ始めた。彼は専門家も舌を巻くほど漢籍を中心とする東洋古典によく通じており、確かに人格者ではあったのかもしれないが、それが良い事とされていたのは18世紀以前の話だ。
 そして彼の時代は“アクロバティック外交”(杂技的外交/diplomasi akrobatik)と呼ばれる諸外国に対して失礼極まりない外交を繰り返していた。その最たる被害者こそ、清華である。国粋主義的に自らの国家の利益を最大限優先し、諸外国に対し礼を失した外交を展開し続けている。
 さて、そんなドゴロニデ氏も引退して現在、最も右翼的であるとされるアブド・ソイセノ氏(abud soiseno)が首相に就任した。彼が台頭してきたドゴロニデ政権後半に前進共和党は“インドネシア民族国家主義国民党”(印度尼西亚民族国家主义国民党/partai nasional pancasilanasionalisme indonesia)に改名され、公式略称にはこれまで党を支えてきた大イデオロギーの一つである“強いインドネシア”を取って“クアト党”(富强党/partai kuat)の名が用いられるようになった。
 ここまでがかなり大まかなインドネシアの独裁の先鋭化の歴史である。しかし、今まではファシズム化と言っても穏健な方だった。アブド・ソイセノ首相が就任してからはそのスピードが一気に加速し、もはや手が付けられない程にまでなっている。

 そもそも、インドネシアでは9月30日事件(九三〇事件)以来共産党の結成は禁止されている。この時点で既に思想弾圧甚だしいが、それは時が経つに連れ形骸化した。しかし、アブド・ソイセノ首相は更なる強力な共産主義結成禁止法で、我らが友人烈士たちを苦しめようとしている。それを完成させたのが“マナマナ”と呼ばれる“宣伝情報省”(kemente informasi dan publisitas)というゲシュタポの如き秘密警察の創設だ。これで、インドネシアでは危険視される革新的同志が意見を表明する事は出来なくなった。
 米国はこの様なインドネシア政府の“赤狩り”姿勢に満面の笑みで、インドネシア政府も米国にべったり、この様な独裁化については黙認している。
米国に寄り付こうと尻尾を振るインドネシアでは、それが遂には歴史修正主義にまで達している。かつて日本の苛烈な植民地支配を受けており、その悲劇の象徴が“ロームシャ”として今に語り継がれているのだが、米国側に寄り付こうとするあまり、それが教科書から消えた。歴史修正主義によって過去の悲劇に目を瞑り、悪しき帝国主義に寄り付くインドネシアを憂いたチン・タン委員長は「ロームシャ問題を忘れるな」という主旨の発言をしているが、政府によって無視された。先程の市民社会党の反日デモの件についても、強烈な措置が出されたのはこのためなのだ。
 鄭和大航海以前から、インドネシアは漢籍文献に登場し、その友好の歴史は千年以上に及ぶ。しかし、ここで注意しておきたいのは今の所だが決して人民が悪いわけでは無いのだ。人民は敬虔な回教信者で、つつましやかに南国の潮風を堪能することに喜びを感じて生きている。世界最大の華僑コミュニティーを抱えており、現地は文化的にも同胞と縁が深く、また、インドネシア人が最も訪れる国は清華であり、尼僑(インドネシアン・ハウス)と呼ばれる在清尼国人も多い。
 彼らは一部の独裁的政党に煽動されているのだ。党はこの状況から友邦、インドネシアを救出すべく、革新的価値観を共有している市民連帯党に支援を行い、正しい世界へ再び領導出来るよう尽力すべきだ。

清華社通信

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